せっかくのシルバー・ウィーク、このまま帰宅するのも芸がない話なので、途中、途中でミネラル・ウオ
ッチングを楽しみながら山梨に戻ることにした。
最初に思いついたのは石川県尾小屋鉱山の紫水晶だったが、4月にN夫妻と訪れたときの成果が
今一つだったので、「金米糖状自然砒」の産地として鉱物コレクターの間で世界的に有名な福井県
赤谷鉱山に変更した。
( 2015年9月 採集 10月 報告 )
3.2 採集方法
「金平糖」を採集するときは、@ ふるい掛け、かA パンニング が有効なのだが、そのためには、
重たい粘土質の土砂をバケツに入れて、急斜面のズリから下の川まで運ばなければならない。古
希(数え年70歳)を超えた『天呆穿人』にとってだんだん”シンド”くなってきた。
今回、新たな方法を開発した。まさに、『必要は発明の母』だ。
「メタ輝安鉱」は、、「ハンマで叩き、割れ口をルーペで見ることの繰り返し」だ。今回採集したよう
な高品位標本の場合、割った瞬間”紅(あか)色”が目に飛び込んでくるので、ルーペがなくてもわか
るはずだ。( 確認のためには、ルーペが必要 )
・ 福井県美山町赤谷鉱山の「メタ輝安鉱」 -その2-
( " METASTIBNITE " from Akadani Mine -Part2- , Miyama Town , Fukui Pref. )
メタ輝安鉱は、輝安鉱【STIBNITE:Sb2S3】と化学式(=組成)が同じ、いわゆる
『同質異像』の関係にある。その違いをまとめてみた。
和名 | 輝 安 鉱 | メ タ 輝 安 鉱 | 英名 | STIBNITE | METASTIBNITE | 組成 | Sb2S3 | Sb2S3 | 結晶系 | 斜方晶系 | アモルファス(Amorphous) 非晶質(No Crystals) |
鉱物学的な一番の違いは、「輝安鉱」は結晶しているの対して「メタ輝安鉱」は非晶質という
ことだ。
「輝安鉱」を石英の結晶・「水晶」に例えると「メタ輝安鉱」は水晶を融かして造った「石英ガラ
ス」に相当する。
今回採集したメタ輝安鉱は石英の晶洞の中のこの産地としては”巨晶”の部類に入る大きな
輝安鉱の結晶に伴うものだ。
(2) 輝安鉱【STIBNITE:Sb2S3】
輝安鉱は、乙女鉱山産の水晶の日本式双晶などと並んで日本を代表する鉱物の一つと言え
るだろう。明治時代に愛媛県市ノ川鉱山か産出した”日本刀のような”と形容される巨大な
結晶は、世界の有名な自然史系博物館では必ずといってよいほど展示している。
( ”日本刀のような”、という表現は正確ではなく、使うべきでないというのがMHの意見だ。なぜ
なら、日本刀は大きく弧を描いているが、輝安鉱の結晶は、まっすぐか、細かく屈曲するか、
はたまた突然大きく屈曲するので、似ていないのだ。 )
赤谷鉱山でも輝安鉱は産出するが、そのほとんどが塊状で、破面に柱面に平行な結晶のへき
開面が見えるか、石英の小さな晶洞に針状の結晶が見られることがある程度だ。いずれにしても、
『日光の手前』だ。
( その心は、『日光結構、手前はいまいち(今市)』 )
(3) 自然砒【ARSENIC:As】
自然砒で粘土層に包まれていたものは採集した直後は白銀色をしているが、空気に触れると
みるみるうちに表面が黒ずんでくる。比重が5.8と普通の石の2倍以上あり、手に持つと”ズシリ”と
重みを感じ、”ヤッタ!!”という気になる。
産状としては、母岩についたもの、完全に分離したもの、その中間の”石付き”のものが観察で
きる。
この時期、黒くて球状の物体がズリに落ちている。”あった!!”と喜びの声を上げるのだが、
手に持ってみて、そのあまりの軽さに、コケにされたようで、ガッカリさせられる。何のことはない、この
地方に多い杉の木の実だ。
・ ミネラル・ウオッチング用語集 その2
( Terminology of Mineral Watching Part2, Chiba Pref. )
(4) 玉髄/石英【Chalcedony:SiO2】
微粒の石英が集合したもので、半透明。割れ口は角張っていて、石英のように”ポロポロ”して
いなくて”粘り気”のようなものが感じられる。
この標本の上のほうに、菊花状の輝安鉱の結晶が見られ、ローソークでも溶ける輝安鉱の融点
が546℃であることから、低温で珪酸イオンが沈殿して生成したと考えられる。
@ 今でも、代表的な標本が観察できるかを確認
A ひょっとして、今まで以上のより良いものが観察できるのでは、という期待
今回の訪山では、@、Aの両方の目的が達せられた。古希を過ぎ、今までのような力任せの
ミネラル・ウオッチングは難しくなってきているので、見方ややり方を変えたアプローチが今回の好
結果につながったようだ。
もっとも、今回「メタ輝安鉱」の良品が出たのは、”たたき台”にしていた石英塊からだった。この
石の上で、メタ輝安鉱が出そうな石を叩いていたら、肝心のたたき台が割れてしまい、その割れ目
に写真の標本があるのを偶然発見したのだから、偉そうなことは言えない。
NHKの朝ドラのヒロインの口癖ではないが、まさに「びっくり、ポン」だった。
(2) 「秋のミネラル・ウオッチング」
奈良の石友・Yさんにいただいた「眉刷毛万年青(まゆはけおもと)」が真っ白い清楚な花をつけ
て1ケ月が経つ。いつも花をつけていた鉢には花が咲かず、もう一鉢に初めて花が咲いた。この花
が咲くと自宅の窓から見える富士山の頂が白く雪で覆われるのだが、今年は例年より遅く、先週
になってようやく初雪が降った。
MH農園も秋の装いを深め、10段をとうに越したトマトが最後の収穫期を迎えている。朝夕の
冷え込みに”ビックリ”したのか、甘みとコクを凝縮して一段とおいしくなった。
そろそろ、恒例の「秋のミネラル・ウオッチング」が近づいてきた。常連さん、久しぶりの親子、そし
て初めての人まで、老若男女20名が集まる予定だ。
「松茸水晶」探しのミネラル・ウオッチングを楽しんだ後は、定宿・長野県川上村の「湯沼鉱泉」
で本物の「マツタケ」が待っているはずだ。
明日は、最後の下見だ。