今回は、事前にネットで営業日を確認して行った。温泉につかる妻と孫娘を残して、私は温泉
街を抜けたクリスタルライン沿いにある増富鉱山跡を訪れた。
中学生のころ始め、永く中断していた鉱物採集を再開して間もない、平成元年(1998年)に
山梨県に転勤になり、手近な山梨県の鉱物産地を回ってみることにした。
鉱物図鑑を調べてみると北杜市(ほくとし;当時は北巨摩郡)須玉町にある増富鉱山で「硫砒
銅鉱」や「銅藍」が採集できるとあった。
硫砒銅鉱は、台湾・金瓜石鉱山と並ぶ有名産地だと知り、金瓜石(きんかいし)鉱山の名前を
知った。同時に、「銅藍」を英語でコベリン(Covelline)というのだと知ったのもこの頃だった。
増富鉱山に行ってはみたが、鉱山跡と思われるズリでは、図鑑に掲載されているような鉱物は
一向に見あたらなかった。2、3回通ったあと、鉱山施設(貯鉱場か事務所跡?)だったと思われる
建物(壁が一部残っている廃屋)の床や床下に大きなものは握りこぶし大のコベリンが、散乱して
いるのに気が付いた。
これを拾って、鉱物同志会新年例会の無料配布に出すとともに、産地を公開した。それから10年
近く経ち、八幡山の水晶採集の帰途に立寄り、コベリンの小さなカケラは何個か拾えた。
貯鉱場にあったものを拾ってきて、鉱物採集したと言うのは、”Mineralhunter”の沽券に
かかわると思い、大雪が残る中を採集に行き、自然硫黄、銅藍、黄銅鉱が層状になっている、
増富鉱山の産状が良く分かる標本を採集できたのは、2002年12月だった。
それから20年が経ち、増富鉱山がどうなっているか、知りたくて訪れてみた。
(2022年8月 訪問)
手前の「落合橋」の左側から本谷川に流れる込む金山沢の右岸(上流から見て右側)に
廃石を捨てた真っ白いズリがあり、その山際には廃墟となった石組みの鉱山施設(ホッパー;
鉱石を集積、積載するための施設)跡が見られる。
当然、坑口は、もっと上にあったと思われ、鉱山施設跡の北側の沢の上流に大きな鉱石塊が
あり、その近くには坑道の一部が口を開けていたが、現在は塞がってしまっている。
採集方法として試みたのは、次の3通りだが、@は絶産、Aも芳しくなく、Bがおすすめだ。
@ 貯鉱場だったと思われる場所での表面採集。
A 石組みの鉱山施設跡のズリ石を割る。
B 沢の中の鉱石塊を割る。
銅藍は、黄褐色の焼けが付着し、青黒い部分のある多孔質の石英に来ていることが多いので、
これを探して割ると良いだろう。
下の写真に示す鉱石は、2002年12月に採集した標本で、黄銅鉱、銅藍、自然硫黄が
層を成しており、白銀色の硫砒銅鉱も点在し、産状が良く分かる。高い硫黄蒸気圧条件下で、
余った硫黄が最後に結晶したように見える。
(2) 銅藍【Covelline:CuS】
細かい隙間の多い真っ白な石英の隙間に紫〜青黒でガラス光沢のある六角板状(箔状)
結晶で産出する。結晶面は湾曲し、雲母のように劈開が見られる。
3差路の貯鉱場跡のものは、母岩は小さいが、比較的大きな結晶が付いていた。
(3) 硫砒銅鉱【Enargite:Cu3AsS4】
黒色金属光沢斜方柱状で産する。柱面に伸びの方向(c軸方向)に条線が発達することが
ある。ルソン銅鉱【Luzonite;Cu3(As,Sb)S4】とは同質異像
(成分は同じで結晶系が違う)関係にある。
加藤博士の『硫化鉱物読本』では、増富鉱山の硫砒銅鉱は、わが国では例の少ない、
やや深所生成熱水鉱脈鉱床中のもので、石英脈中に「銅藍」と共存する、としている。
(4)自然硫黄【Native Sulfur:S】
黄色で脂ぎった光沢のある結晶が石英の空隙に柱状に成長したり、空隙を充填する形で
産出する。
鉱石を割った瞬間に”鼻先でマッチを擦った”時と同じ、硫黄特有の臭いがする。
(5)重晶石【Barite:BaSO4】
石英のくぼみに微細な白色不透明の葉片状結晶の集合が見られる。白色透明から淡緑色
不透明のものまであり、後者は微粒の自然硫黄を含むとされるが本標本では確認できない。
(2) 「みずがき湖ビジターセンター」
上の地図の左端にみずがき湖がある。もともとは塩川ダムという名だが観光客目当てにそれらしい
名前をつけたようだ。
ここには広い駐車場と土産物を売ったり展示する「みずがき湖ビジターセンター」がある。この時期、
北杜市みずがき天文愛好会が主催する『星空写真展2022』が開催されていた。
来場者がお気に入りの写真にシールを付ける人気投票になっていて、投票すると景品として天体写真
(はがき)がもらえるルールで、孫娘と私たち夫婦で3枚いただいた。
これなども、2023年秋に開催予定の『甲府郵趣会創立75周年記念切手展』の参考になる。
(3) 「送り狼像」
上の地図の裏面には、「増富ラジウム温泉郷」「黒森民宿村」「みずがき湖周辺」の観光スポットが
イラストで解説してある。
帰宅してじっくり見ていると、増富温泉郷のはずれに狼か狐らしき絵と「送り狼」が書いてある。将来、
オオカミ研究者になるのが夢の孫娘は見られなかったことを残念がっている。
一般的に「送り狼」には悪いイメージがあるが、ネットで調べると、若い娘を助けた良い狼が誤解した
村人に殺されるという悲しい伝説がある。それを記した案内板とオオカミの像があるようなので、次回
訪れるのを楽しみにしている。
(4) 小中学生とミネラル・ウオッチング
夏休みに入ってすぐ、今シーズン2回目となる小中学生と先生そして保護者を課外授業で
長野県川上村に案内した。子どもたちだけでなく、先生や保護者にも楽しんでいただけたようだ。当日、
皆さん雨を予想しておられたようだが、屋外で活動中は雨は降らず、無事甲府駅に送り届けた
とたんに降り出した。”晴れ男”健在だ。
湯沼鉱泉の「水晶洞」を見学し、兵庫県の石友・N夫妻に提供していただいた外国産「宝石・鉱物
標本」などを配布し皆さんに喜んでいただけた。9月中旬には、3回目を実施するので違う子どもたちと
会えるのを楽しみにしている。