翌日、いつもの場所でYYコンビと待ち合わせ、向山の露頭に向かった。そこには
横1mはある晶洞が”ポッカリ”口を開けていた。
大Yさんが、晶洞の続き、小Yさんが晶洞の延長線に狙い付けて掘りはじめた。
間もなく、小Yさんが 『晶洞が開いた!!』 と叫ぶ。近寄ってみると、直径30cm
あまり、ガマ粘土に石英の破片が混じった晶洞だ。これは、期待できる。
小Yさんが取り出す水晶にベッタリついたガマ粘土を拭いながら、頭付だけ残し
選別する。六角柱状に平板も混じり、大きなものは20cm近い。
昼食前に、午前中の採集品を3人で分配。小Yさんは、前日採集したのより良品
で気に入ったのを2、3本、大Yさんが群晶と20cm近い大きな平板、そして私は
”予約しておいた11cmの平板”のほか単晶などをいただいた。
昼食を食べながら作戦を練り、午後、少し離れたポイントを掘りはじめて間もなく
大Yさんが 『晶洞が開いた!!』 、それからしばらくして、ようやく私も『晶洞が
開いた!!』 となった。
採集品を、仲良く(?)分配し、足取りも軽く引き上げた。3人の感想は、『 これ
で、向山鉱山の東側は卒業だ 』
帰宅して、クリーニングを終えた巨晶と美晶を並べて妻に見せると 『 わ〜
スゴイ!! 持つべきものは石友だね 』 と夫婦してYYコンビに感謝している。
( 2007年8月採集 )
晶洞には2種類ある。
@ 石英の結晶面に囲まれた三角錐状の空間
A 円筒状空間
@のタイプは、奥行きが10cmを超えるくらい空間が広くないと水晶の結晶は
見当たらない。Aのタイプは、ガマ粘土が充満し、黒平や乙女鉱山と同じように
水晶の良品が期待できる。
晶洞の壁にあったはずの水晶は、ほとんどがガマ粘土と共に、底に溜まってい
て、地殻変動の激しさを物語っている。そのせいか、群晶は少なかった。
(1) 水晶【QUARTZ:SiO2】
今回採集できた水晶を一覧表にまとめてみた。
区 分 | 説 明 | 標 本 例 | 備 考 | 平板 (ひらばん) |
”平板”とは 扁平な晶癖をもつ 水晶の俗称 |
![]() 高さ7cm【私の採集品】
| 柱状結晶 |
六角柱状の もっともありふれた 結晶 |
![]() 高さ11cm |
先端は、ポイント(点) でなく、線になっている |
平行連晶 |
上下軸(c軸)が 平行な結晶が2つ以上 集合している |
![]() 高さ6.5cm |
全体として 1つの水晶に なっている |
板状結晶集合 |
湾曲した薄板状 結晶が積み重なった ”奇怪”な結晶 |
![]() 高さ17cm |
全体として、両錐の 結晶になっている
どのように、こんな |
群晶 (ぐんしょう) |
水晶結晶が 集合したもの |
![]() 横12cm | 水入り水晶 |
空隙の中に 液体(水?)を含む |
![]() 高さ7cm |
中の液体は 表面張力で 丸まって集合して いる
【既報】と同じ産状 |
木材の規格では、幅と厚みで”板”と”角(柱)材”を区別しているようだ。幅:厚さ
の比率が 2.25:1 、つまり幅が厚さの2倍強までは”角(柱)、それを越えると
”板”になるようだ。
鉱物の世界では。結晶の形を”板状”とか”短(長)柱状”など呼ぶことがあるが
その定義は見たことも聞いたこともない。木材にならうと 『 幅が厚さの2.5〜3倍
以上あれば板 』 と考えて良いのではないだろうか。
この定義で向山鉱山産の水晶を見直してみると、頭付き水晶の内、平板は約
10%で、前のページで 「 多くが”平板”」 と書いたのは、訂正が必要である。
( 先端が”点(ポイント)”でなく、”線”になっていると、”幅が広い”と錯覚して、
『平板』 と思い込んでしまうようだ )
(2) 私が単身赴任から戻った2007年4月以降、まるで ”月替りメニュー”のように
新しい産地が発見されている。2007年8月も、新たな1ページが加わった。
この産地は、わかりにくく、途中には意外に危険な場所もあるので、訪れる場合
は十分注意したい。
(3) 産地への道すがら、あるいは採集している間、四方山(よもやま)話に花が
咲く。これも、単独行にはない、集団でのミネラルウオッチングの楽しみの1つで
ある。
小Yさんが、『 3人の干支(えと)は、”申(サル)”、”酉(鳥)、”戌(イヌ) だ』
と言い出した。3人は、”桃太郎の家来、猿、キジ、犬 トリオ” なのだ。
そう言えば、賢い(?)犬が、産地情報を調べ、嗅覚を生かし産地まで案内し
現地ではキジが高所から全体を眺めてポイントを見つけ、猿は引っかく(欠き
採る)という風に役割分担が決まっているようだ。
( ただ、いつも同じ役割かというとそうでもなさそうで、それがうまく行く秘訣か )
(4) 向山鉱山では、各種の水晶が採掘され、その特長は次のように文献に紹介され
ている。
@色・・・・・・無色、白色(表面曇り)、草入り
A晶相・・・・柱状単晶のみで、双晶は産出しない。
B特徴・・・・透明度が高く美しい。
草入りが多く、青(緑?)色草入り、枯れ草(電気石?)入り
小型のトッコ多産
今回、透明度が高く、美しい水晶は採集できたが、『草入り』や『トッコ(群晶の
こと)』の良品は採集できていない。
近々、それらを探索してみたいと計画している。