小中学生とミネラルウオッチング 2022年 7月











        小中学生とミネラルウオッチング 2022年 7月

             ( Mineral Watching with boys & girls ,Jul.2023 , Nagano Pref. )

1. はじめに

    私のHPを読んだ神奈川県の私立小中一貫校のR・H先生から『クラスの小学6年生18名を鉱物採集に連れて
   行きたいのだが、適当な場所を教えて欲しい』
、と相談のメールをいただいたのは、2007年9月の
   初めだった。
    10月に山梨県の水晶産地に案内したところ、生徒だけでなく付添いの保護者や引率の先生方にも好評で、
   同校の恒例行事になった。

    この話が他校にも広まり、神奈川や東京そして横浜の学校や違った学年のこどもたちを案内して欲しい、
   という依頼が飛び込むようになった。それが、いつしか各学校の恒例行事になっていった。

    16年目となる2027年 7月、梅雨の合間の良い天気に恵まれ、この年最初のクラスを案内した。6年生
   10名と引率の先生・保護者2人を案内した。何時ものコースで長野県川上村の甲武信鉱山貯鉱場で
   鉱物採集を楽しんだ後、湯沼鉱泉「水晶洞」を見学して、お別れした。

    事故もなく、子どもたちが昼食の時間も惜しんで鉱物採集に夢中になり、次々と質問してくるのを見て、
   これからも、身体が続く限り対応する心算だ。
   ( 2023年 7月 実施 )

2. 事前準備

 (1) 下見
     鉱物採集地点の手前に川があり、流れも烈しく水温も10℃くらいしかなく冷たいので、落ちたら知床の
    観光船事故があったように”低体温症”で重大な事故になりかねない。

     2020年8月に、川を渡る橋を架けておいたが、1年経ったので破損して渡れなくなっていたらアウトだ。

     ・ 川上村甲武信鉱山貯鉱場 2020年8月
     ( Ore stock yard of Kobushi Mine , Aug. 2020 , Nagano)

     6月10日、甲府に戻ったので橋の様子を見に川上村まで行ってみた。橋の姿は影も形もなかった。
    私のブログの愛読者・Sさんと息子さんに手伝ってもらい、橋を修復というより新しく作り直した経緯は
    次のページで既にお知らせした通りだ。

 川上村甲武信鉱山貯鉱場 2023年6月
( Ore stock yard of Kobushi Mine , Jun. 2023 , Nagano)

     7月初旬、Sさんから「橋を見に行ってところ、傷んだところはありません」とメールをいただいたが、その後
    雨が降ったので気になって前日の6日に再び下見をして、安全を確認した。
     湯沼鉱泉に立ち寄り、スイカを預け、当日子どもたちに食べてもらう段取りをつけた。

 (2) パンニング皿
     「ざくろ石」などは、表面採集で結構良品が見つかるのだが、「灰重石」、「ホセ鉱」そして「自然金」などの
    比重の大きな”重鉱物”を採集するのはパンニング皿を使うのが一番確実だ。
     パンニング皿でズリの泥を洗い流すと、「緑水晶」など、小さいが綺麗な鉱物が面白いように見つけられる。

     引率のK先生から、「パンイング皿は学校に1枚しかないので、MHの方で準備していただけますか」とメールが
    あった。2021年7月に、兵庫のN夫妻などとのミネラルウオッチングで中津川市鉱物博物館を訪れ、3枚買い
    足しておいたので、11枚あり、子どもたち全員に行きわたるはずだ。

 (3) 鉱物チェックリスト
     採集地で採れる鉱物の写真に名前・特徴・用途採集の難易度、そして採集未済のチェック欄をつけた
    チェックリストを図鑑代りに作製して参加者+α部 カラー印刷して置く。
     2022年から、裏面には鉱物全般の知識と採集してからのクリーニングの方法やラベルをつけて保管する方法
    まで解説した資料を印刷することにした。
     2021年に、別な趣味の「郵便切手」関連の展示会を山梨県立図書館を6日間借りて開催した。来観者の
    お土産に2種類のラミネートしたしおりを渡すのに、ラミネータを購入したので、チェックリストもラミネートした。
     これだと現地で水にぬれたり、泥で汚れても、平気だ。
     2022年は、ラミネートしたものを子供たちに持って帰ってもらっていたが、2023年からは回収し、代わりに
    普通紙に印刷したものを最後に渡すようにした。(MHなりのSDGsだ。)

         
             『甲武信鉱山の鉱物チェック・リスト』                   『鉱物のクリーニングと保管方法』

 (4) お土産
     山梨や長野県の山奥の産地で採集して置いた綺麗な水晶などを「水晶洞」の出口に隠して置いて、最後
    に”宝さがし”をしてもらっている。
     ところが、この3年ほど私自身本格的なミネラル・ウオッチングに行っていないので、在庫が枯渇してしまった。
    補充に山に行かなければ、と思っていた矢先に朗報が飛び込んできた。兵庫の石友・N夫妻が「終活(?)で
    整理した世界の鉱物標本があるが受取ってもらえないか」、と打診があり、喜んで頂くことにした。
     「子ども達に配る」、と伝えると、「若い人にいつまでも大事にしてもらえれば」、とN夫妻にも喜んでいただいた。
    ( これで、2年くらいはお土産で悩まずに済みそうだ )

     野辺山のJR最高地点でトイレ休憩した後、川上村に入ると直ぐにレタス畑が広がっている。レタスの季節は
    ほぼ終わり、寒さに強いブロッコリーや白菜が植えられている。この一帯は今から16,000年くらい前の旧石器
    時代の遺跡が点在し、ここで採集した黒曜石やチャートの”剥片”もお土産に加えている。

     こうして私の方の準備は終了し、本番を待つばかりとなった。

3. 甲武信鉱山「貯鉱場」でミネラル・ウオッチング

 (1) こどもたちと合流
      クラスの人数などによって、利用する交通手段が違う。一般的なのは、@ レンタカー A 観光バス だ。
     レンタカーだと、JRの特急で甲府駅まできて、「駅レンタカー」を使うと割引がある。甲府までの間の高速
     道路の渋滞に巻き込まれることもない。産地の「貯鉱場」のすぐ近くまで車を乗り入れられるので、歩く
     時間が短くでき、その分採集の時間を長くできる、等のメリットがある反面、先生や保護者が運転する
     ので、負担が増えるし、万一の事故の危険性がある、などのデメリットもある。幸い、今まで事故はないが、
     常に頭から離れない。

      レンタカー利用の場合、JR甲府駅前の「信玄公銅像」前に集合し、初対面の挨拶をする。いつも
     「先生や私の注意を聞いて、無事に家に帰る」をお願いして、車に乗り込んで出発だ。ETCで双葉SA
     から中央高速に入り、須玉ICで降りる。

      バスの場合、「須玉IC」の出口手前にある駐車スペースで合流することになっている。ここだと、トイレも
     利用できるからだ。

      
                   集合場所(甲府駅・須玉IC)

 (2) 野辺山「JR最高地点」でイレ休憩
      国道140号線を清里に向かう。レンタカーで何台かに分乗している場合、後ろの車が信号に引っかかると
     路肩に停めて待つ。清里を過ぎ、野辺山の「JR最高地点」でトイレ休憩だ。ここには、「幸せの鐘」がある
     のだがこれを鳴らすのが意外と難しい。”幸せを掴むということは簡単ではない”というとことを教えてくれている
     ようだ。
      鐘を鳴らす姿や、クラス・学年別の記念写真を撮る。

      
                  野辺山「幸せの鐘」・K先生クラス

      運が良ければ、たまにしか通らない「高原列車」に出会えることもある。必ずと言ってよいほど、列車が
     好きな子どもがいるので、列車と出会えると大喜びだ。
      今回は、コロナの影響で中央道が渋滞せず早い時間にJR最高地点に到着したので、「ハイレール号」に
     出会うことができなかった。

      
          高原列車「ハイレール」とこどもたちが乗ったバス
                【2021年7月のクラス】

      レタス畑の脇に旧跡時代の遺跡があり、この辺りで16,000年前に旧石器人たちが動物を追っていたことや
     彼らがつかった石槍や石器の欠片が落ちていることなども説明する。

 (3) 甲武信鉱山貯鉱場跡
      秋山集落の手前から、梓川沿いに進むと『町田市自然休暇村』の施設がある。大型バスはここまで、
     レンタカーなら500mくらい先の駐車スペースまで、車の底を擦らないように注意してゆっくりと進む。

      駐車スペースに一行が到着し、ここから梓川沿いに「貯鉱場」を目指す。カラマツ林が切り倒されたので
     甲武信鉱山(梓金山)があった辺りが見えるところで、次のような説明をさせていただいた。

      @ 昭和25年ごろまで、ここから500mほど標高が高い位置に鉱山があって、そこで採掘した
        品位の高い鉱石を索道(ケーブル)で「貯鉱場」まで運んでいた。
      A 甲武信鉱山は「スカルン(接触交代)鉱床」と呼ばれ、南の海で生まれた珊瑚礁などが
        起源の石灰岩と山梨県側に水晶をもたらした花崗岩とのコラボレーションでいろいろな
        鉱物が生まれた。
      B それは、今から1,200万年くらい前だった。

       踏み分け道の脇にある白に黒い斑(まだら)模様の岩石をハンマーで掻いてクイズだ。「この岩石の名前は?」。
      こどもたちから異口同音に「花崗岩!!」、と元気な答えが返る。
       硬い花崗岩が”ボロボロ”になって、眞砂(マサ)になるので、起こり得ないようなことが起きた時に『まさか』
      という語源だとも話す。(「諸説あり」、というのも付け加えた)

       脇を流れている梓川は、千曲川、新潟県では信濃川となって日本海に注ぐ。ここの石英粒も日本海に
      運ばれて美しい砂浜の1粒になっているかもしれないことを話す。さらに、今朝、甲府駅や須玉ICで手を
      洗った水は太平洋にそそぐことも話す。

       さて、問題の梓川の渡河だ。2023年は、湯沼鉱泉の社長によれば、6月の初め頃、近年例を見ないほどの
      豪雨が降った、とのこと。橋が流されたのもそのためだった。
       その後は、山梨や長野の降雨量は少ないようで、川の水量は平年並みだった。ただ、川の水に手を入れた
      子が、「冷たい!!」、と悲鳴に近い声を上げた。

       渡る際のルールを説明した後、渡り始めた。ロープが張ってあるので先生や私が手助けしなくても、子ども
      たちは”スイスイ”橋を渡ってくる。余裕がある子は、指で”ピース(Vサイン)する。
       ただ、橋は一人が渡り終えたら次の人、というルールにしたので、一人当たり30秒前後かかる。全員が
      渡り終えるのに5分近くが掛かり、全員ズリに着いたのは10時半ごろだった。

      
           最初の難関、梓川を渡る

 (4) 「貯鉱場」でミネラル・ウオッチング

      荷物をおろして、ここでの採集方法は、つぎのように3通りあることを説明し、実演して見せる。

      @ 表面を見て回り、「方解石」、「水晶」、「柘榴石」などを探す。大きすぎる標本は、持参した金槌
       (かなづち)で小さく割る。このとき、眼鏡(めがね)やゴーグルを着けるのを忘れないように。
      A 川岸には崖になっている場所があり、そこを熊手で掘ると水晶などが次々に出てくる。
      B 私が持参した8つのパンニング皿を交代で使って土砂をパンニングすると、「自然金」や「Bi(蒼鉛)−
        Te(テルル)鉱物」そして「灰重石」など、比重の大きな重たい鉱物が採集できる。
        泥を洗って採集するので、「緑水晶」なども見つけやすい。

      パンニングの実演をすると、比重の大きい重い鉱物がパンニング皿の底に残る。

       採集開始すると、すさまじい勢いで質問攻めだ。「これは何ですか」、と採集した鉱物の名前を聞いてくる。
      「方解石」、「緑水晶」・・・・・・・、と次々に答える。
        母岩に付いた「灰重石」を採集した子がいたので、持参した風呂敷で暗幕を張った下で、ミネラライトで
      照らすと青白く『蛍光』することを観察してもらう。

       しばらく質問が続いたので、「これ何でしょう」、と聞きにくる子には逆に「何だと思う。こっちから見ると断面
      は六角だよ」、と特徴を説明すると、自信なさそうに小さな声で「水晶・・・・・・・」、と正解だ。すかさず、
      「良く解ったね。」、と褒めてあげる。

       素晴らしい標本を採集した子がいると全員に集まってもらい、鉱物名や特徴をなどと解説する。透明で
      厚みのある方解石を採集した子がいたので、さらに劈開させて「複屈折」して一本の線が2本に見える角度
      があることを説明する。

         
         ずれているが線は1本に見える                  線が2本に見える
                          「方解石」の”複屈折”
                           【2021年7月採集品】

       複屈折で1本の線が2重にみえるのは、次の図で説明できる。「方解石」の厚みが厚いほど、2本の線が
      ハッキリ見えることもお分かりいただけるだろう。

      
          線が2本に見える訳

       また、このように透明な方解石を「アイスランド・スパー」、と呼び、アイスランドでは「方解石」を描く切手が
      発行されていることも伝える。

    ・ 北極圏をめぐる地球一周の旅 【アイスランド】
      ( Tour around the World & Arctic Circle 2016 , - Iceland - )

 (5) 「金だ!!」
      いつものことだが、「金がありました!!」、と一人の子が興奮気味に叫ぶ。「ここに一杯落ちている!!」と、
     水面を指差す。確かに水の中に金色にキラキラ光る粒が見える。

      
          金色にキラキラ光る砂金(?!)

      「黒雲母が風化して金色に見える。金と間違う人がいるので『愚か者の金』という」と解説するとその子は
     納得したが、その後も同じような質問を何人かの子から受けた。

      子どもたちは、パンニングの有効性に気付いたようで、大勢が安全な”淀み(よどみ)”に集まってパンニング
     皿を揺すっている。パンニングの最後の仕上げを頼まれて「灰重石」などの重い鉱物の揺り分け方を実演す
     る。こうして、念願の「ホセ鉱A」を手にした子もいた。

      
                   淀みでパンニング

      これだけ大勢の子ども達が散らばって採集すると、思いがけない標本を採集する。そのいくつかを紹介する。
      ある子は、今まで私がやったことがない場所で大きな柘榴石を発見した。

      
              新たな産地発見か!?
                 【2021年10月】

      別な子は、「トビゲラ」の仲間の巣を発見した。岐阜県中津川市の産地では珍しくもなく、高木勘兵衛の
     『錫鉱』発見の糸口になったという伝承すら残されているほどだ。長野県の標高が高く、しかも岩魚が生息する
     くらい水温が低い渓流で見たのは初めてだ。
      そういえば、橋を渡る手前には「トリカブト」が数株綺麗な紫色の花をつけているのに気付いたのも2020年が
     初めてだ。ここ2、3年、7月頃産地を訪れると「アブ」が群がり刺されたがこれも地球温暖化の影響だろうか。
      幸い、山ブドウの葉が紅葉し始める10月になると「アブ」の姿は全く見なかった。
      いつもだったら掘らない場所を掘った子が持ってきたのは、地元では「鎌水晶」と呼ぶ、両翼3センチはある
     「日本式双晶」の群晶だったこともある。

    ・岐阜県中津川市木積沢の「錫鉱記念碑」その3
    ( Monument of Stream Tin Discovery - Part3 - , Kichimisawa Nakatsugawa City , Gifu Pref. )

         
                日本式双晶!!                 トビゲラの仲間の石造りの巣
              【2021年7月採集】                    【2020年9月観察】

       「貯鉱場」で昼食をとった後、荷物をまとめ引き揚げた。

       再び梓川(千曲川の支流の1つ)を渡る。慣れたせいか怖がる子もなく、”スイスイ”と渡り、写真撮影の
     ために、立ち止まってもらうありさまだ。

      
              採集品を背に橋を渡る
         【緑の中に、貯鉱場のズリが見える】

3. 湯沼鉱泉「水晶洞」見学

 (1) 湯沼鉱泉にGo!!
      湯沼鉱泉に着き、社長に挨拶だ。社長から湯沼鉱泉と『水晶洞』の歴史などを話してもらう。後で私が
     次のように補足説明する。

      
              「水晶洞」山中社長の説明を聞く

      1) 誕生した当時の状態で観察できる『草入り日本式双晶』
          およそ1,200万年前、できた透緑閃石の針が入った水晶、しかも2枚の水晶が蝶の羽
         のように84度33分の角度で合わさった日本式双晶を誕生した当時の状態で観察できる
         貴重な展示施設だ。
          川上村で観察できる鉱物の一級標本を余すところなく展示しているのと日本各地、
         そして外国産の鉱物まで展示している。

      2) 個人で建てた博物館
         鉱物を展示している博物館は全国にあるが、それらのほとんどは国・都道府県・市などが
        税金を使って建てたものだ。
         「水晶洞」は、社長が個人のお金〇億円をかけて、そのほとんどを自分が重機を動かして
        建設したものだ。

      3) 貴重な川上犬
         湯沼鉱泉では、この地方で猟犬として育てられていた川上犬の保存にも力を注いでいて飼育して
       いる川上犬の中には、「狼爪(ろうそう)」が残っているものもいて、オオカミに近い犬とされている。
        (ただ、今では2、3匹ぐらいしかいないので、もうすぐ絶滅の心配がある。)

      陸橋を渡って「水晶洞」に向かうと、灰色をした大小の岩がある。これらは「大理石(方解石)」だ。この
     地域には石灰岩が多い。何千万年か前、南の暖かいサンゴ礁がプレートに乗って北上し日本列島にくっついた
     ものだ。(地学で言う「付加体」)
      地下深くでできた花崗岩が吹き上がり、接触した石灰岩は融けてユックリ冷えて結晶の大きな方解石に
     なり、石灰岩のカルシウムを受け取った石英分がザクロ石などに変化したことを説明する。

      今まで1,000人前後の子どもたちを案内したが、「水晶洞」の入口で集合写真を撮ったことはなかった。
     今回は、10人と小人数だったので、初めて入口で写真を撮った。

      
               「水晶洞」入り口で記念写真

      「水晶洞」に入ると、外の暑さが嘘のように”ヒンヤリ”と涼しいのを通り越して肌寒いくらいだ。
     懐中電灯を一人一つ持たせ、さながら、”洞窟探検”のようだ。

      
      「緑水晶日本式双晶」晶洞に見入る子どもたち
                  【2015年】

      「水晶洞」を出ると、『宝さがし』のサプライズが待っている。今回も、兵庫県の石友・N夫妻から提供して
     いただた世界の鉱物に解説書を付けセットにしたもの、A川上村の旧石器時代の遺跡で採集した黒曜石
     B山梨県や長野県産地の水晶 を一人1つずつ採ってもらうことにした。

      以前は、前の日に下見に行って、水晶を隠しておいたのだが、必ずしも前日に行けなくて数日前に隠しておくと、
     その間に来た人が持って行ってしまうということがあり、皆さんに水晶洞で待ってもらい、隠すようにしている。

      
                  サプライズ「宝さがし」
                       【2021年】

       ”一人1つ”というルールにしたので、3つも4つも採って、どれにするか悩んでいる子もいる。

      駐車場に戻り、湯沼鉱泉の社長に「水晶洞」を見学した感想を伝える。

      
             「水晶洞」山中社長に感想を伝える

      子どもたちが、口々に「きれいな水晶があった」とか「たくさんの鉱物があってすばらしい」とかいうのを聞き
     社長は目を細めていた。

      子どもたちは、”オオカミに一番近い犬”とされる「川上犬」にも興味津々の様子だった。現在は、2匹しか
     いないため、増やすことは難しそうだ。

       バスの子ども達の場合はここでお別れし、バスを見送った。レンタカー組の場合は、甲府駅近くのガソリン
     スタンドに直行して給油し、車を返してお別れだ。
       物流業界は、”2024年問題”を抱えている。運転手の勤務時間など労働条件改善が課題で、バスの
     運転手さんから「15時には『水晶洞』を出発できるように」と強く言われていた。今回は、それを守ることが
     できた。

4. おわりに

 1. 『ミネラル・ウオッチングは水晶に始まり・・・・』
     今回のように、小・中学生から大学生、そして鉱物に興味を持ち始めた人々を産地に案内する依頼が舞い
    込んでくる。最近、妻の母親の介護やなにやかやと身辺が慌ただしく、今年も『ミネラル・ウオッチング』は
    中止せざるを得なかった。

    私の持論の1つに、『ミネラル・ウオッチング(鉱物採集)は、水晶に始まり、水晶に終わる』がある。嬉々として
   水晶を探す小中学生と教育関係者を見ていて、その感を一層深くした。参加した皆さんが、鉱物を通して、
   自然を大切にする心を養ってくれることを祈っている。

 2. 『ミネラル・コレクション』
    こどもたちが鑑定に鉱物で私が興味を抱いたものは「どこにあった?」と聞くようにしている。そうすることで、
   今まで知らなかった産地の全体像が少しずつわかってくるようになる。
    それらを踏まえて私が採集した標本をいくつか紹介する。

  (1) ホセ鉱A(?)【JOSEITE-A:Bi4TeS2
       貯鉱所で橋の建設を手伝っていただいたSさんは、「ホセ鉱A]を探そうとしたが、よくわからなかった
      ようだ。
       初めてだと、どのように採集すればよいのか分からなし、そもそもどのような外観、色をしているのかが
      分からない人がほとんどだ。

       ザクロ石結晶や塊状方解石を含む母岩に、小さな塊状で産出する。平坦なへき開面を示し、表面が
      銀白色〜赤紫色になっていることや”箔状”で薄く剥がれるのが特徴。

        
               母岩                       表面が虹色を示す結晶
                             ホセ鉱A
                         【2022年採集品】

      特定のポイントの土砂をパンニングすると、ほぼ確実にホセ鉱の分離標本を得られることを突き止めた。

     
           ホセ鉱【パンニング採集品】
               【2022年採集品】

  (2) 方解石【CALCITE:CaCO3
       大きなものはメロン大の結晶がある。へき開して、平行平板の板状で産出することが多い。透明度の
      高いものを選んで上手に割ると、『複屈折』を示す標本が得られる。

      
               複屈折を示す方解石
                 【2022年採集品】

 3. 子どもたちからの寄せ書き
    夏休みが始まる寸前、K先生からの大型封筒が届いた。中を開けると、K先生からのお手紙と子どもたちの
   寄せ書きが出てきた。

      
                     子どもたちからの寄せ書き

5. 参考文献

 1) 谷山 四方一:鉱物鑑識の実際と鉱山探検,厚生閣,昭和14年(1939年)
 2) 山梨県・山梨県地質図編纂委員会編:山梨県地質誌 山梨県地質図説明書
                           同委員会,昭和45年(1970年)
 3) 益富 壽之助:鉱物  −やさしい鉱物学 -,保育社,昭和60年(1985年)
 4) 中川 清:山梨県の水晶 水晶Vol.11 No.1,鉱物同志会,1998年
inserted by FC2 system